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エンストするホンダ EU9iGB(エネポ)を直してみる

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こんにちは。そしてあけましておめでとうございます。今年はちょいちょいブログを更新していきたいと思います。

さて先日,近所のおじいちゃんが我が家に突然駆け込んできました。

「あんちゃん機械得意だべ?うちの発電機の調子がいぐねぇ(良く無い)から見てほしいだげど。銭は出すかっよ。」

という事だそうで。私の本業は映像屋とパソコン屋なので整備士でも何でも無いのですが、急がないし直らなきゃ直らないで良いと言ってくれたし、忙しいわけでも無いので断る理由もなく。とりあえず引き取ってみる事にしました。

ホンダ EU9iGB

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後日おじいちゃんの作業場(何かの職人らしく隣町に作業場がある。すごい。)から宅急便で発電機が届きました。1台が故障しているもの、もう1台は正常に動いているものです。(正常に動いている状態が分からないと直ったのか何だか分からないので。おじいちゃんが2台所有していて良かった...)ちなみに後日判明しましたが宅急便で発電機は送れません。

さててっきりガソリンの発電機が来るかと思っていましたが送られてきたのはホンダ製のEU9iGB、通称エネポ。この機種は何度か映像の方のお仕事で借りて使ったことがあります。

ご存知の方もいるかと思いますが一応説明すると、エネポはカセットボンベを使用する発電機でこれが最大のセールスポイントです。
今から約10年ほど前に発売されたエネポ、発売当初はマーケティングに相当難儀したのか,フライヤーや店舗に置かれた写真にはお姉さんがこれ(エネポ)を公園かどこかに引いていってその場でホットサンドを焼くという、あまりにも無理があるシチュエーションが写されていたと記憶しています(笑)

あれから月日は流れ大規模災害が頻繁するにつれて「燃料がガスであるが故にガソリンのように発電機内で腐ったり詰まったりせず、そのため長期保管されがちな防災用に向いている」という点が評価され、それなりの数が行政や企業,防災意識の高い個人向けに売れていったという経緯があります。

修理開始

とりあえずホンダ公式から落とした本機の説明書を読んで、ネットの海でガス発電機が如何にして動くのかをざっくり下調べしたので修理を開始します。ここから先は自己責任です。変なことをすると修理中,修理後にガス漏れ等々で最悪人が死にます。お気をつけください。

不具合の内容はおじいちゃん曰く「エンジンが掛かってもすぐエンストする」だそうです。
私の方でも確かに症状を再現できました。エンスト時はオイル警告灯が点灯しています。

ひとまずメンテナンスカバーを開けてオイル交換。
1ヶ月ごとにオイル交換をしていたそうですがそれなりに汚れていますね。というか写真では見えませんがスラッジが多い気がします。250mlしかオイルが入らないのでオイルが酷使されてしまうのでしょうね。

ホンダ ウルトラG1を近所のホームセンターで買ってきたので規定量の250mlを入れます。
(少し前までは青い缶だったと思うのですが、デザインが変更されたのかしら?)ただフィラーキャップの位置が悪くめちゃくちゃオイルが入れづらいので、ダイソーなどで売っているマヨネーズやソースを入れるボトルを買ってくるか、ちゃんとしたオイル差しを使えば本体を汚さずにオイル交換が出来ます。我が家には幸いだいぶ昔に使っていた原付のオイル交換用のオイラーが転がっていたので助かりました。

ところでこのオイルフィラーキャップの位置はどうにかならないものですかね...折りたたみのドレンレールとか、そういう機構があるとキレイにオイルが抜けるのになぁ。

フィラーキャップのゴムパッキンがボロボロだったので交換。ちなみにフィラーキャップの締め付け規定値は2.3Nmで、これ以下だとオイル漏れの原因となるそうです。流石にトルクレンチは持っていないので適当にレンチで締め付けましたが、お手軽な発電機感を醸し出す割に制約が多いですね...。

ついでにメンテナンスされているのかどうかも不明なエアフィルター(エレメント)も交換します。

この時気づきましたが出力周波数が関東なのに60Hzになっていたので50Hzに変更しておきます。おじいちゃんにも聞きましたが特に意図したものではないそうなので。

私は事業者アカウントを持っているのでモノタロウで注文しましたが...一般の方はHonda Power Products 認定販売店なるところでパーツを発注されると良いと思います。(多分売ってくれると思います)

このエアフィルターはいわゆる湿式なので新品のエンジンオイルを染み込ませてから取り付けます。

ここで一旦動作確認をしましたが状況は変わらず。オイルの警告灯だけは消えました。もう少し深掘りします。

本体右上部、カセットボンベを設置するところに「プラグ点検口」なるものがあったので開けます。(説明書にはこの点検口に関する記載がありません)
ところがネジ一本で止まっているだけのフタなのに何故か開かずあれこれ試したら、ボンベを固定する機構のレバーが「解除」の状態だとこのフタは取れないようです。なのでレバーを「固定」の位置にするとフタが取れます。

プラグコード発見。
それにしても点検口と言いつつめちゃくちゃ狭い上にプラグまでが遠い!ホンダさんちょっと!(恐らく説明書に記載されていないということはここを開ける時はもうエンドユーザーが行う整備では無いのでしょう)

点検口が狭い&私の指が太いせいで力が入らずプラグコードがなかなか抜けない。。
格闘すること20分。プラグ本体が登場。

庭先の様子がいつもと違うのでパトロールしに来た野良猫の「からし」(と勝手に呼んでいます)。エサをあげている訳でも何でも無いのですがスリスリしてくる甘えん坊の1歳。

16mmのプラグレンチを突っ込みます。

しかし手持ちのプラグレンチではトルクが足りないのかプラグが固着しているのか、とにかくプラグが回らないのでプラグの焼け具合が確認できず。

多分こういうレンチならなんとか回せたと思われ。

無理に触るとエンジンを壊す事になるしなぁ...と思いつつ、1時間あれこれ粘りましたがダメなので一旦考えることに。

考えた結果プラグは後回しにすることにしました。代わりに一度外装をバラしてレギュレータ(ガス調圧機)にくっついている不純物キャップを確認することにしました。
外装を止めているネジはプラスネジ、六角ネジ(穴付き)、六角ネジ(10mm)が混在しています。

特に10mmの六角ネジは数こそ少ないのですが少し奥まったところにあるのが殆どなのでT型レンチがあると便利です。
目に見えるところのネジを外してもなぜか外装が外れず悩みましたが、正面パネルの停止と始動を操作する丸いレバーの蓋を外すと隠しネジがありました。

当然ながら前面パネルを取り外したところでインバータと思われるユニットやエアクリーナボックスが邪魔でプラグにレンチを突っ込むのは無理そう。
カセットボンベを設置する機構は取り外さなかった(ボンベを設置する機構にも六角ネジがあるのですが、左側ボンベ奥の六角ネジを外すためにはラチェットが必要そうだったので諦めました)のですが、これさえ外せれば恐らく何とかしてプラグを回せた、、はず。

マフラーの上の辺りにレギュレータやミキサがと思われるものがありました。
配管が2本接続されているちょうど下のところに六角ネジが2つあります。これを外すとそれが不純物キャップです。当然ですがここをいじると内部に残留しているガスが漏れ出てくるので十分に注意します。(なのであまり触りたくなかった)

わーえらいことになっていました。キャップがこの状態だとレギュレータの中身は...大変なことになっていました。可能な限り綺麗にします。(画像を撮る余裕がありませんでした...)

家に転がっていたパーツクリーナを使いました。

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この辺りは詳しくないので間違っていたら申し訳ないのですが、この”不純物”は恐らくタールだと思われます。液化ガスを精製する際にタールが発生し液化したガスに混じるため、精製時とガスをガスボンベに充填する前にフィルタ等を通して取り除かれているはずなのですが、どうしても微量に残ってしまうもの、のはずです。これは仕方ないそう(つまり仕様)です。

より大型のガス機器や設備には大抵ドレンコックが存在していてタールを簡単に抜けます。そこまで大量にガスを消費する発電機ではないから?なのかは不明ですが、エネポはここまで分解しないとダメというのは設計としてはちょっと良く無い気もするし、しかし操作を誤れば,あるいは使わずともそういう機構が存在するだけでメンテを怠るとガス漏れ事故が起こる箇所でもあるので整備士の方が食いっぱぐれないためにも仕方ないのかなと思わなくもないです。

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そして重要なのはどうやらガスボンベ(の充填元が重要なのだと思われるのですが)のメーカーによって“不純物”の許容量が違うようです。ホンダではエネポの他にガス耕運機 ピアンタFV200というガスエンジン搭載の製品があり、ホンダではこれらを動かす際に使用するガスボンベを「東邦金属製」に限定しています。(おかげで町中のホームセンターとドラッグストア,スーパー等8軒も回ってやっと見つけました。ウエルシアで。)

ガスボンベはJISによって規格化されているので他社製でも基本、物理的には使用できます。しかし指定メーカーのものではないガスボンベを使うと先の不純物トラップとレギュレータがタールまみれになり動作不良を引き起こします。正確には東邦金属製でも長い期間使っていればいずれ不純物でタールまみれになるので、そのスピードが指定メーカー以外だと速いということになります。

後日、発電機の修理なんかをしている方それとなく聞いたらどうもこの手のガス発電機と特に相性が悪いのはニチネン製のマイ•ボンベだそうです。

とは言え東邦金属製のボンベは(少なくとも私の街では)なかなかお目に掛かれません。でもどうやら東邦金属がOEMしているボンベはままあるそうで。

  • イオン系「ファミリーカセットボンベ」
  • ジョイフルホンダ「シャトルJH」
  • ニトリ,コメリ「シャトルカセットボンベ」
  • ダイエー「デイリーユースボンベ」

などなど。大抵これらのOEMボンベにも東邦金属純正と同様ボンベの外装にホンダ製品が動くと書いてあるのでそれが目印です。

ちなみにガスボンベで動く発電機は他に三菱がOEMしてヤマハやデンヨーなどでも販売されているMGC900GBがありますが、これはイワタニ製のガスボンベを推しているそうです。この機種でもやはりニチネン製のガスとは相性が悪いそうな。

このことからエネポでどうしても他社製ボンベを使うのならイワタニにしたほうが良さそうです。それ以外はエネポの寿命を削っていると思って使う必要がありそうですね。

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すみません。話が逸れました。

レギュレータの清掃が終わったので諸々を組み付けます。外装をバラした時から「組み付ける時はどうすっかなぁ」と悩んでいたものが一つだけありまして...。

これは前面パネルに運転状況を表示するLEDユニットです。しかしこいつに接続するケーブルがものすごく短い!その上ユニット側の端子が奥まっているので更に遠い!側面からでは尚のことよく見えない!という困った子。

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周波数の信号を飛ばしているケーブルもあるので作業スペースはこれくらいしかありません。30分ほど悩みましたが、ここは先にショートドライバを使ってユニットを取り付けた後、ケーブルを手探りで差し込むことでなんとかなりました。

 

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やっと組み上がりました。問題なく始動して一安心です。丸一日かかってしまいました。

おわりに

おじいちゃんには大変感謝されました。めでたしめでたし。私にもお金があったら防災用にエネポがほしいなぁ。